ホイールひとつでこれだけ違う!トラック競技における「真っすぐ走る」ことの難しさ/ふ〜こらむ vol.46
2024.02.03
チーム楽天Kドリームス所属、梅川風子選手によるコラムVol.46をお届けします。今回のテーマは「真っすぐ走る」こと。ホイールで、走行ラインでこれだけ違うんです!
梅川風子プロフィール

元・全日本学生選手権優勝のスピードスケーター。競輪選手と自転車競技選手の二足のわらじを履きながら、パリオリンピック出場枠獲得を目指し奮闘中!
前回(Vol.45)はこちらから
走路によってこんなに違う
自転車競技をする上で欠かせないテクニックの1つが「真っすぐ走る」。ですが、これが出来るかできないかでタイム種目は大きく差が出てしまいます。
250mバンクでは
1番内側からブルーバンド(青い平たい走路、ほぼ平面)
→ブラックライン(バンクの傾斜が始まる場所)
→レッドライン
があって、通常ブラックラインとレッドラインの間を走ります。

その2つのラインの間を走るにあたって、タイム種目ではよりブラックライン(より内側)に近いところを走れたらタイムは大幅に速くなるのですが、その説明をしたのがこのホワイトボード。

コーチはこれをよほど強調したいのか、1年前くらいに書かれたものなんですが、今も残してあります。
書かれているのは男子の200mフライング(助走ありの200m)のタイム。ブラックラインを走った選手と走れなかった選手ではこれだけ違うよと表してくれたのですが、
「えっ?!こんなに違うの?!」
ってくらい違うらしいです。

このタイム差が出ていたら、例えばヨーロッパ選手権の予選を見てみると、この0.2秒の中に4、5人くらいがザラっと入ってきてしまうんです。怖い怖い。。
ブラックライン、グッドフォーム、アンドパワー

なのでジェイソン(・ニブレット短距離ヘッドコーチ)からは、年がら年中「ブラックライン、グッドフォーム(エアロで小さくなれってこと)、アンドパワー」ってずーーーっと言われ続けています。
ただ、真っすぐ走る事ってとてつもなく難しい。200mフライングタイムトライアルの時やチームスプリント、チームパシュートといったタイム種目では前輪後輪ともにディスクホイールを使いますが、あのディスクホイールってやつは、なんか知りませんが隣で自転車がチョロっと通ったくらいの風や、バンクのうねりなんかに煽られる煽られる。
その上、重いギヤ踏んでるものだから自転車がブレる……
そんでもって、助走のときに壁や風に吸い込まれるし……
もちろんブラックライン上を走ろうと思ってトップスピードでコーナーに突入するんですが、遠心力に引っ張られて全然内側に入れない……
って困った事象ばかり発生します。

最初に乗った時は「え、操作不能なんですけど」「これ車輪壊れてますか?」って聞きに行くほど変な感覚で、真っ直ぐ走ることもできませんでした(笑)
今はこんなこと言って笑えますけど、当時本当に笑えなかったですからね……
メカニックの人に本当に壊れてないか聞きにいって困らせたこともありましたからね……(笑)
使いこなせば強い味方のディスクホイール

それでも、真っすぐ走らせることができれば空力的にとても速いのがディスクホイール。だからタイム系種目では、前輪後輪ともにディスクホイールが使われるわけです。
短距離では1キロや500メートルTT、チームスプリントとスプリント予選はディスクホイール。スプリント対戦とケイリンはバトンホイール、と使い分けられています。

前輪はバトンホイール、後輪はディスクホイール
中長距離種目のチームパシュートでは前後輪ディスクホイールを使いますが、私からすると、風や前走車の影響を受けまくる種目で、あんな不安定な体勢で隊列を組んでトップスピードで走ってることが信じられない!私がやったら、多分前の人と1車身くらい空いちゃうと思います(笑)

職人技のチームパシュート
バトンホイールを使う対人種目(ケイリンやスプリント)では風の影響を感じることはほとんどありませんし、バンクのうねりなんかもほとんど気になりません。
それほど前輪ディスクホイールの影響は計り知れないってことですね(笑)
バトンホイールの種目でも、こんなネックも

ただその一方で、走りやすいバトンホイールで挑むケイリンの時にネックなのが、最初に話した「ブラックライン」や「ブルーバンド」の話です。
国際ルールのケイリンでは、わずかな横の動きも許されていません。理由は落車のリスクをできるだけ低くするためです。
ブラックラインの内側は「ブルーバンド」と呼ばれるほぼ平面の走路。ケイリン種目でトップスピードが出た状態でコーナーに突入して、捲られたり並走などで内側に押し込められてブルーバンドまで落ちた場合……そこはほぼバンクの傾きがないので、スリップして転倒の可能性が大きいゾーンでもあります。

まあコーナーのブルーバンドってのはどの種目でも厄介なのですが、ちょっと危ないポイントなんですよね。
日本の競輪場はバンクの角度も緩やかで、内側の走路も幅をとってあるので、内に押し込まれてしまっての転倒は稀。でも250走路ではそうはいきません。

緩やかな走路の競輪場
ブルーバンドにトップスピードで落ちる、もしくは、自ら突入してしまうと、平面のコーナーのため確実にスリップしてしまいます。
……というリスクなんかもあり、「ただ真っすぐ走るだけでも大変」+「それを操作できる体づくり」+「コーナーでブラックラインギリギリを走れるテクニックが必要」なのが、自転車競技なのです。。

ネーションズカップinオーストラリアでは真っすぐ走ってる強者たちをご覧あれ!

オーストラリアの朝ごはん

チームピットの龍角散

大会会場での動画収録
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