鈴木奈央

「課題は体力面」3種目それぞれの課題と収穫、印象的だったあの選手の優勝 ネーションズカップ香港大会/鈴木奈央・インタビュー

2021.06.26

『TISSOT UCIネーションズカップ』第2戦・香港にて、大暴れしてきた日本代表チーム。コロンビアで実施予定だった『ネーションズカップ』第3戦も延期になり、アジア選手権もオリンピック後に延期・・・と、再び国際大会から離れる期間となる。

香港大会を終えた手応え、レースの振り返り、そしてこれからのこと・・・鈴木奈央選手に話を伺った。

※インタビューは5月末に実施しました。

一言で言うなら「楽しかった」

Q:5月中旬のネーションズカップを終え、現在隔離期間中です。隔離生活はいかがですか?

明日で隔離期間が終わります。最初は長いなあと思ったんですが、終わってみればあっという間でした。午前午後それぞれで練習メニューを渡されていたので、練習をしたり、寝たり、YouTubeを見たりして過ごしていました。

Q:大会全体を一言で表すと何になりますか?

「楽しかった」です。久しぶりの海外遠征でしたので。

Q:海外遠征は元からお好きなんですか?

ずっと海外にいると、それはそれで嫌になってきたりもするんですが(笑)1年半くらいずっと行っていなくて、久しぶりだからこそ楽しかったです。大会自体も2020年秋の全日本選手権くらいしかありませんでしたし・・・自分の実力を試す機会がなかったので、そういう意味でも楽しかったですね。

Q:実際行ってみて、想定と違ったことなどはありましたか?

やっぱり新型コロナ対策の面は大きかったです。徹底的な隔離がなされていました。ホテルは一人部屋で、廊下に監視員のような人が立っている状況。2日に1回PCR検査を受けましたし、そもそも出場国数も少なかった。これまでの遠征とはまったく違いました。

Q:もし隔離じゃなかったとしたら、何がしたかったですか?

以前の海外遠征では、レースまで余裕がある時は、ロードトレーニングで外に出てカフェに寄ったりしていました。香港は3、4回目なんですが、デパートがすぐ近くにあるので、そこによく行っていました。

逃げを許してしまったスクラッチ

鈴木奈央

Q:スクラッチとオムニアムとマディソンに出場されました。出場種目それぞれの振り返りをお願いします。

2日目のスクラッチから、私のレースのスタートでした。得意な種目なので、表彰台が目標。「スプリント力のある選手より逃げの強い選手が多い」とコーチから事前に聞いていたので「逃げを決めさせないようにして、最後にスプリントに持ち込む」という作戦でした。ですが、逃げられてしまって・・・。得意な展開に持ち込めず、6位で終わりました。

Q:逃げられたのはどの地点ですか?

40周あって、序盤のアタックにはすべて反応できていました。ラスト10周切ったあたりで全体のペースが上がって、ラスト5周くらいで一度そのスピードが緩んだ時、逃げられてしまいましたね。「これはスプリントの展開だな」と思って構えて、集団の後方にいたんです。「やばい」と思った時には前との差が開いてしまっていました。

Q:「もうだめだ、逃げられた」と思うのって、どういうタイミングなんでしょうか?気持ち的に「無理」と思うのか、具体的に、例えば「半周くらいの差があるからもう無理」と思うのか・・・

今回で言えば、逃げられた時に自分が先頭で追うことができていたら良かったんです。私は集団の後方にいて、他の国の選手がその逃げた選手を追いました。逃げた選手、追いかけた選手の時点で相当距離が開いていました。集団の後ろからそこへ追いつこうと思うと、もうそれだけで足を使ってしまう。「やばい」と思った時点で追いかけられたら良かったんですが・・・

Q:それができなかったのはなぜでしょう?

集団の後ろにいたので、自分の前にも選手が並んでいるんですよね。集団自体のスピードも上がっている中で、前に出ていくのはちょっと難しい。なので、あのタイミングで後ろにいてしまったことが敗因だと思います。

4チームだけのマディソンは常にフルパワー

鈴木奈央, 古山稀絵

Q:マディソンについて聞かせてください。

マディソンへの出場は4チームのみでした。ベラルーシは逃げが得意な選手だったので、まずは逃げさせないこと、そしてペアを組む古山稀絵選手と一緒に表彰台に登ることが目標でした。

中盤くらいまでは良い感じで交代でき、走れていました。でもラスト20周くらいの時にベラルーシとスペインの選手に行かれてしまい、ちょうどそこで交代ミスもしてしまいました。

そこまでのポイントがあったのでギリギリ3位になれたんですが、最後があまり良くなかったですね。でもそこまでは、交代もスプリントも上手にできていたと思います。収穫もあれば、反省点もありました。

Q:逃げられたタイミングと、交代ミスが重なったということですね。交代ミスというのはどのようなものだったんでしょうか?

本当はこれから走る人が上(バンクの外側)から降りてきて、今走ってる人が下(バンクの内側)から行って投げる、という感じなんですが、上と下が逆になってしまったんです。前の選手とごちゃっとなってしまい、それを避けようとしたら、本当は自分が下にいなきゃいけなかったのに、古山選手の上に行ってしまって・・・交代の手が反対になってしまいましたね。

古山稀絵

Q:いつもと違う手だと、やっぱり勝手も違うものですか?

全然投げられないですね!タッチになっちゃいます(笑)

Q:マディソンのハンドスリング(交代時に手を繋ぎ、相手選手を放り投げること)って、片手だけ筋肉つきそうですよね。

そうですね、片方だけ筋肉痛になります(笑)

それから、今回4チームしかなかったので、スプリント周回では全チームにポイントが入るんです。もっと人数が多ければ「この周はついていくだけにして、次の周回でポイントを取る」みたいな作戦が取れるんですが、今回はそうもいきません。毎回高いポイントを取らないと点差がつかないので、10周に1回のポイント周回で、毎回毎回もがいていました。

だからやはり、体力的にもきつかったですね。後半になると判断能力が鈍ったり、走りが乱れたりしました。その辺りも反省点です。

インターバルは15分!?地獄のオムニアム

鈴木奈央

Q:次はオムニアムについて聞かせてください。

1種目目のスクラッチは、逃げを作らせずに最後にスプリントの作戦。個人種目のスクラッチと同じ失敗をしないようにと思っていました。梶原選手の後ろについて、3着でした。

・・・ですけど、次のテンポレースまで15分くらいしか間がなくて。テンポレースは死んでましたね(笑)地獄でした。

Q:(笑)それは全選手そうですよね。みんな死んでました?

そうですね(笑)4種目が2時間半くらいで終わったんですが、人生最短でした。全日本選手権は3時間半くらいでやって、オリンピックも3時間くらいと聞いてます。

私は中長距離選手の中では短距離寄りの選手というのもあって、回復が追いつかなくて大変でした。テンポレースは「ラップ(1周追い抜き)されないようにする」というレースしかできませんでした。全然ダメでした!

テンポレースとエリミネーションの間は1時間くらいあったんです。だから「休憩時間がもっと均等だったら・・・!」って感じでしたね。

梶原悠未/Yumi Kajihara, Women's Omnium, TISSOT UCI TRACK CYCLING NATIONS CUP - HONG KONG

エリミネーションにはちゃんと回復して臨んだつもりだったんですが、2回目くらいで降ろされてしまいました。後ろの人との接触もあり、あまりうまく走れなかったなと思います。

でも人数が少ないのもあって、その時点で点差があまりついておらず、まだ挽回が可能ではありました。最終種目のポイントレースで頑張れば、まだ表彰台のチャンスはありました。

鈴木奈央

テンポレースでは序盤でポイントを取り、その次の次くらいにキツくなってちぎれてしまいました。それを踏まえて、クレイグ(・グリフィン)コーチに「途中でちぎれるくらいなら最後まで残った方がポイントも高い」と言われたので、ポイントレースでは「序盤は落ち着いて取れた位置をキープし、最後にポイントを取ろう」という作戦を取りました。

作戦通りの走りはできましたが、表彰台に乗った選手たちに比べれば、まだまだ体力面で劣っていると感じるレースでした。

Q:鈴木選手って、オムニアムで国際大会に出たのは今回が初めてでしょうか?

国際大会はたぶん出ていないです。1人しか出られないし、そこはほとんど梶原選手が走っていました。

※鈴木選手がチーム楽天Kドリームスとして出場することで、ネーションズカップでは日本から2選手(梶原悠未、鈴木奈央)が出場可能となった

Q:2024年パリオリンピックに向けてトレーニングをしていると思いますが、一番優先している種目ってどれなんでしょうか?

今年はチームパシュートをやらないとは聞いています。なのでオムニアムとマディソンしかないですね。出場枠的に、オムニアムとマディソンは同じ人が走ることになるので、両方を走れるようになる必要があると思います。

課題、そしてあの選手の印象的な姿

Q:今大会で出場した全種目の中で、一番良かったレースは?

マディソンですね。しっかり練習した通りに走れましたし、メダルを獲ることができて自信もつきました。

Q:では逆に、一番の課題だと思ったことを教えてください。

体力、そして早く回復する能力です。オムニアムで実感しました。ネーションズカップのような毎日レースがある環境では、リカバリーを早くする必要性を感じました。

Q:自分以外の選手で、印象に残った姿があれば教えてください。

オリンピック代表の選手たちは、短距離、中長距離ともに調子が上がっている様子がよくわかりました。

小林優香さんのケイリン優勝は感動しました。レースが終わってダウンしていた時、ちょうど決勝戦だったんです。

女子スプリント,Womens Keirin, TISSOT UCI TRACK CYCLING NATIONS CUP - HONG KONG

Q:その感動って、どういう点からくるものでしょうか?

優香さんとはガールズケイリンで一緒になったりもするし、話すことも多いし、普段から仲良くしてもらっています。その優香さんがオリンピック延期で気持ちが沈んで、悩んで、全日本ではタイムがいつもより全然出ていなくて。それがオリンピックシュミレーションではタイムが出て、今回はとうとう優勝して・・・と、そういう姿を見てきました。

とても強い優香さんも知ってるし、どん底の優香さんも知ってる。からの、あの優勝でした。だからすごい・・・すごいな、と思いました。

ひとつひとつのレースをかなり細かく振り返ってくれた鈴木選手。レースを見ていない方にも、展開が伝わるのではないだろうか。丁寧に言語化し、反芻し、次へと向かう鈴木選手を応援していきたい。

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