ポジティブに悔しがり、そして次のステップへ ネーションズカップ香港大会/佐藤水菜・インタビュー
2021.07.01
『TISSOT UCIネーションズカップ』第2戦・香港にて、大暴れしてきた日本代表チーム。コロンビアで実施予定だった『ネーションズカップ』第3戦も延期になり、アジア選手権もオリンピック後に延期・・・と、再び国際大会から離れる期間となる。
香港大会を終えた手応え、レースの振り返り、そしてこれからのこと・・・佐藤水菜選手に話を伺った。
※インタビューは5月末に実施しました。
初の海外がコロナ禍の国際大会

Q:5月中旬に香港で行われたネーションズカップを終え、現在隔離期間中です。隔離生活はいかがですか?
そうですね・・・意外に不自由はないです。外に出られないのはちょっと残念ですが、結構充実してます。
Q:トレーニングメニューが渡されていて、それを家で行っているとはお聞きしています。それ以外の時間はどのように過ごしてますか?
家の掃除をしたり、家具を買い替えたりして、模様替えしてます。あとはゴロゴロしてますね。めちゃめちゃ楽しいです。
Q:家の中があまり苦じゃないタイプ?
全然苦じゃないですね(笑)
https://twitter.com/mina114keirin/status/1390511962757296129
Q:では、大会全体のふわっとした感想を聞かせてください。大会全体を一言で表すと、どんな感じでしたか?
「楽しかった」です!今までにない緊張感とか、会場の雰囲気を味わえました。
ホテルから会場までバスで移動する時しか外を見る機会がないんですが、目の刺激がすごかった。車から外を見るのって結構好きなんですが、日本にない景色が多くて楽しかったです。露店で肉が売られてたり・・・
Q:肉(笑)ほかに衝撃的だった景色はありますか?
上半身裸で運動してる人がすごく多かったですね!競技場内も気温30度超えてて、半袖半パンでも暑いくらいの気候でした。
Q:これまでに海外に行ったことは?
今回が初めてでした。初めての海外が新型コロナ禍というのは結構大変でした。でも逆にいい経験になったと思います。
Q:もし仮に隔離のない普通の旅行だったとして、やりたかったことはありますか?
ホテルからテニスコートやバスケコートが見えてたんですが、すごくやりたかったです!ホテルから競技場までも近いので、移動中に見られるもの自体が少なかったんですが、運動してる人がすごく多かったんです。いつも見ながら「やりたいな〜」って思っていました。
香港、他に何があるのかもよくわからないんですよね。建物が多かったことは分かりましたけど・・・
運動したかったのと、先ほども話した露店を見て歩きたかったな、という感じです。
Q:じゃあまたいつか、ですね。
そうですね。次の機会があれば、です。
「いつもと違うことをしてみた」ケイリン

Q:ケイリンとスプリントに出場されました。出場種目それぞれの振り返りをお願いします。
ケイリンは予選と本戦があって、予選は3着で勝ち上がりのルールでした。いつもは日本の女子メンバー4人でやるか、ガールズケイリンしか経験がありません。相手の力もわからない状態でした。
「とりあえず前に出よう」と決めて走って、海外の選手が動いたのに乗ってそのまま2周くらい風を切って、2着に残れました。結果としては良かったんですが「もうちょっと他のことできたんじゃないか」と。それがあったので「決勝では違う動きをしたい」と思いました。
決勝ではリー・ワイジー(李慧詩:香港)が1番車、私が2番車。彼女がすごく強いのは知ってたので、いつもだったら早めに動くんですが、ゴール前とか、後ろが来た時などの、行けるタイミングで仕掛けようとしました。
ずっと足を溜められたのは良かったんですが、いざ動こうとしたら道が無い。足が余った状態で4着に終わってしまったので、とても悔しかったです。
Q:力を出しきれずに終わってしまったと。
そうです。「いつもと違うことをやろう」と思って、実際やりたいことができたのは良かったと思います。でもやっぱり、前を抜きたかった。悔しい思いが残りますね。
Q:ケイリンを100点満点中で評価すると、何点くらいですか?
65点(即答)。
Q:即答でしたね、65点。
目標最低限のこともクリアできてなくて、めっちゃくやしかったので、それくらいかなと思います。
待てない性分
Q:2020年秋の全日本選手権でのケイリンでも「早く動いてしまった」と話してましたが、早めに仕掛けることが多いですか?
そうですね。待てないんです!
今回の予選では早めに前に出ても、ずっと冷静に仕掛けられていました。全日本に比べればマシになっていると思います。でも「やっぱり私が2周くらい前か!」みたいな(笑)技量がないなあと感じましたね。
Q:早めに動くのはガールズケイリンでも?
そうです、めっちゃ早いです。先行にこだわってるわけでもないんですが、待てなくて、仕掛けちゃう。
勝てるなら捲りとかでも全然良いんですけど、自分が勝てる位置・・・と思ったらやっぱり早めに動かなきゃ、となって、結果的に先行が多くなっています。デビューした時は1周半とか平気でやってましたね(笑)
Q:その「待てなさ」に対して、コーチたちからは何か言われていますか?
何もせずに終わるよりは仕掛けていった方が良い、積極性があるのは良いことだと褒めてもらっています。

Q:でも決勝ではあえて別のことをしてみたんですね。
人も見た上で判断しました。初手位置が前で、かつ強い人(リー・ワイジー)の後ろでしたので、やってみようかなあという気持ちになることができました。
Q:リー・ワイジー、どうでしたか?
一番前でずっと風を切った上で、(小林)優香さんとゴール前勝負していました。その後ろについて足を溜めてたのに抜けなかった、というのはすごく悔しい。「悔しいっ!次こそ!」って感じです(笑)
レースの反省はポジティブに
Q:なんだか悔しがり方がポジティブですよね。
ケイリンはポジティブにならなきゃやってらんないなと思って。練習なら、いくら自分を落としてもまた練習で取り返せるけど、大会のレースは1回きりです。次にどうやって活かそうか考えないと、無駄になっちゃうなと思います。
だから「あれがダメ、これがダメ」みたいな反省よりは「こうすれば良かったな〜!」ってタイプの反省をしようと思ってます。
Q:それは以前から?
割と前からですね。練習では落とすだけ落として、レースの時はポジティブに考えるようにしていました。
勝ちパターン探し中、スプリント

Q:次はスプリントについてお聞かせください。
ハロン(予選の200mFTT)は直前にアドバイスをもらったり、「初めての海外大会でタイムを出したい」という思いが強すぎたりして、上手に走れなかった感じがあります。予選6位だったので、1回戦(1/8決勝)からスタートでした。
女子スプリント予選結果
| 1 | リー・ワイジー | 香港 | 10.644 |
| 2 | 小林優香 | 日本 | 10.819 |
| 3 | 太田りゆ | ブリヂストン | 10.866 |
| 4 | 梅川風子 | 楽天Kドリームス | 10.949 |
| 5 | ミリアム・べチェ | イタリア | 10.971 |
| 6 | 佐藤水菜 | 楽天Kドリームス | 10.989 |
| 7 | マダリン・ゴドビー | アメリカ | 11.009 |
※スプリントでは予選の順位によって、序盤のレースをスキップ出来る場合がある。今回佐藤選手以外の日本人選手は1回戦(1/8決勝)をスキップし、準々決勝からスタート
1回戦は初めての1発勝負の対戦。私、前が嫌いなんです。後ろを走って、前の選手の動きを見ながら自分のペースで駆けるのが好きなんですが、前を走って後ろを見ながらコントロールするのが苦手で。でも、前を引いちゃったんです。「まじ?」みたいな。
※1回戦は1本勝負の対戦形式
初めての海外レースで、相手がどんな選手かもわからないし、その上苦手な前。めちゃめちゃ緊張しました。でも周りから声をかけてもらったのもあり、冷静に走ったら、初めて前で勝てたんです。「これで苦手克服できたかも!」と思いました。
日本人対決の3戦

次の対戦相手は太田りゆ選手。スプリントがめちゃめちゃ強い選手です。「まじか、ここで当たる!?」みたいな感じでした。
※準々決勝からは2本先取の対戦形式
1本目は後ろで、自分のタイミングで仕掛けられて、1本取ることができました。2本目は前で、全然追いつけなかった。やっぱりうまいなと感じました。その次の3本目を取ることができて、競技人生で初めてスプリントで勝てました!
すごく嬉しかったんですが、その後の小林優香さん、梅川風子さんとの対戦はダメで・・・冷静さがないなあと感じました。
そもそもバンクって怖いんですよね、転んじゃうから!
Q:そんな、元も子もないことを(笑)
でも怖いんですよ。特にスプリントで前を走ると、後ろの選手を見ながらゆっくり走るから、余計転びやすいです。1人でパニックになっちゃうんですよね。冷静さの面でも、そういうところからだなあと思います。
Q:「ゆっくり走る方が転びやすい」というのは普通の自転車でもそうですから、実感としてよくわかります。
そうなんです。バランスが取り辛いし、バンクは斜めなので余計に・・・
実は私、一度練習で滑って落ちたことがあるんですよ(笑)すっごく恥ずかしかったです。
転んだ時すごく恥ずかしかった、その経験があるから、余計に「転ぶのが怖い」と思ってるのかもしれません。
焦りの理由は・・・

その他の反省点としては、3位決定戦の1本目と3本目で、同じ負け方をしてしまいました。自分が前で、相手に仕掛けられて遅れる負け方です。完全に同じ走り方で負けてしまいました。
そのひとつ前、小林優香さんと対戦した準決勝も、気持ちの面では同じ負け方をしています。焦っていたせいで、仕掛けなくていいところで全力で仕掛けてしまいました。
だから、スプリントは本当に時間がかかるなあと思いました。45点くらいです。
Q:スプリントの焦りはどこから?
「怖い!落ちそう!」ってところからです。
まず「落ちそう!」ってわたわたしながらスタートするんです。そこから踏みたいけど詰まってしまい「どうしよう!」となって、自分から仕掛けちゃう、とか。
私の場合、焦ってるからこそ車間が詰まりすぎちゃうことが多いんです。そうなると仕掛けにくくなる。車間が詰まっていることの利点もあるんですが、私はダッシュがないので、相手に合わせられてしまう。
だからできれば距離を取りたいけど、それはそれで先に行かれた時怖い。「あの人強いのに、自分がこんなに離れてて大丈夫かな、置いてかれないかな」となります。自分の足に自信がないからこその焦りですね。
Q:前が苦手なのは佐藤選手特有のことですか?それとも、全般としてスプリントで前は不利だったりするんでしょうか?
私は後ろの選手を見ながら走るのが苦手で「前を向いた瞬間に仕掛けられたらどうしよう」と焦ってしまうタイプです。でもそれは、私が勝手に苦手意識を持ってるだけだと思います。前が不利、ということはないです。
日本の競輪でも、前にいるより強い人の後ろにつきたい人なんです。それもあって苦手意識が強いのかも。
Q:今回のスプリント、4回対戦があって、うち3回が日本人対決でしたよね。
そうです。総当たりしました(笑)しかも、りゆさんと梅川さんに対しては3本走ってるので、日本人相手で8回走ってます。

Q:ほぼ国内戦みたいになりましたね(笑)相手を知ってるからこそ有利、みたいな面はあったのでしょうか?
相手を知ってるからこそ、自分の負けパターンがわかるんです。「勝てない」という嫌なイメージがあるんですよね。「ここで払拭したい!でもダメだった!」でした。勝ちパターンがまだないんですよね。
Q:では今回太田選手に勝てたのは大きいですね。
はい、すごく自信になりました。
勝てたのは嬉しかったんですが、結局ほか2人に負けてます。同じ負け方もしてます。太田選手との対戦も初めてだったので、今後がどうなるかはわかりません。どんな人が相手でも勝てるようになりたいし、そうならなきゃいけないと思います。
Q:では、それに一番必要なものはなんだと思いますか?
「気持ち」ですね。気持ちが大事です!それさえあれば良いことも起こると思います。
Q:気持ちを鍛えるのは大変では?
全然育たないですね。タイムが良くなって、気持ち的にも前よりはプラスに考えられることが増えたと思います。マシにはなりました。でも常に不安と戦ってるし「どうしよう」ばかり。「良くなった」ではなくて「マシになった」くらいしか言えないです。
初の国際大会で得られたこと

Q:今回の大会で、自分以外の選手で印象に残った姿はありますか?
中長距離の選手が、外国の選手について「この選手はこういうのが得意だね」など話していたのが印象的です。相手を見るというのはとても大事だなと思いました。
Q:短距離ではそういう話し合いはなかったんですか?
なかったです。むしろ「誰が強いから、というものではないよ」と言われていました。とはいえ相手の癖とかを観察するのは大事だと思ったんです。おそらくコーチが言いたかったのは「この人は自分より弱いから大丈夫」「この人は強いから勝てない」と思うな、ということかと。
Q:レース終わってすぐのタイミングとかで、コーチからアドバイスをもらったりしましたか?
私と梅川さんが対戦した時、1本目を走り終わったらジェイソン(・ニブレット)コーチに呼ばれました。
「ちょっと2人来て」と呼ばれて「ダメだよ今の」と。対戦相手同士が呼ばれて一緒にダメ出しを喰らうのはちょっと面白かったです。
2本目の後は「ダメって言ったじゃん」、3本目の後は頭抱えてため息。梅川さんと2人で「難しいね」って話しました。
Q:大会を振り返って、普段の練習と違う学びはありましたか?
スタッフ・コーチ陣のありがたみを改めて感じました。いろんな面でサポートしてくれ、環境づくりをしてくださってました。競輪は自己管理なんですが、何から何までやってくださいました。スタッフさんのおかげで、万全の、良い状態で走ることができました。

笑顔で悔しがる様子が印象的だった佐藤選手。口調は軽やかなものの、レースや自分自身の分析はけして軽いものではない。これが初めての国際大会、これからの躍進に注目だ。



