勝負の世界の最高峰/ふ〜こらむ vol.62
2024.10.27
チーム楽天Kドリームス所属、梅川風子選手によるコラムVol.62をお届けします。
デンマークでの世界選手権トラックから帰国!現地レポートと、見事決勝へと進んだケイリンのレースの振り返りを綴っていただきました。
梅川風子プロフィール
元・全日本学生選手権優勝のスピードスケーター。競輪選手と自転車競技選手の二足のわらじを履きながら、世界の舞台で戦う。
前回(Vol.61)はこちらから
世界選手権、ありがとうございました!
世界選手権のためにデンマークに行ってきました。
日本から夜遅くでも観てくれた人ありがとうございました!!
結果はスプリントは17位、ケイリン5位。
スプリントとケイリンどちらも力を入れてきたので両方いい成績出したかった欲張りなのですが、ケイリンの方ではようやくファイナルの地まで辿り着きました。
今回は少しだけそのケイリンについて振り返ろうかな。
その前に、デンマークのいろいろ
世界選手権はヨーロッパで開催される事が多く、ここ4年間、世界選手権前はフランスで合宿を行ない、時差の調整やレース前のトレーニングをしていました。
が、今年はオリンピックっていう大イベントがたった2か月前にあったので、合宿はなしでレース直前でデンマーク入りすることになりました。
デンマークは、フランスとかイギリスの「歴史的建造物感」というよりもホテルの家具がIKEA的な感じで、オシャレでカラフル。綺麗な街だね〜って印象で、どうやら一家に一台暖炉が備え付けなのか、全部の家に煙突がついてて可愛いんです。
ホテルにももちろん暖炉があって毎日火が焚かれててのんびりしたりととっても素敵。
レース直前だったこともあり、観光地とかほぼほぼ観ることもできなかったので(それは毎度おなじみですけど)、「デンマークらしさとは?」って感じなんですが。
ソフトクリームが有名……なのに!
そんな中でも精一杯デンマークらしさを感じようと奮闘しました!!
ソフトクリームが有名で、「あんなに美味しいソフトクリームはない!」と我が母が豪語していたので、是非それだけは行ってみるか!とガッツで行ってきました。
ガッツで行ったはいいものの、ソフトクリーム機が壊れててジェラートになりましたけど……。目的の意味ない(笑)
しかも時間がなかったので、たった10分か15分ほどですぐに帰りましたが、デンマークらしいところをチラ見できてよかったです。
本当その15分くらいしかデンマークぽいところ歩いてなくて、一応ホテルの隣にあるスーパーをチラ見とかはしておきましたけど!
買うものなさすぎスーパー2周する始末でしたが……。
さすがに慣れたご飯
今回はホテルと競技会場が10分ほどのバス移動で済むので快適。
ご飯は、なんかさすがに「もう慣れてきましたヨーロッパ系海外のご飯」ってかんじ(笑)
サーモンが美味しかったかな!
私は朝ごはんが割とお気に入りで、「ジンジャーショット」ってのが美味しかったです。
甘くて体にも良さそうな生搾りジンジャージュース。
ジェイソンは必ず2杯(笑)。
ちなみにジェイソンは朝ごはんは1時間半くらいかけてコース料理みたいに食べます。
朝ごはんルーティンがめんどくさい系な人!
直線が長いバンクだが
さて肝心の会場のドームとレース。
今回のドームは、見た目からしても直線が結構長めのバンクです。
フランスのルーベが同じような直線が長いバンクでした。
とはいえ、ルーベほど長くはなく、コーナーも横に振られず走りやすい感覚。
ただ直線が長い長いという割には、直線勝負の「差し」のように相手を抜くのは、意外と難しい印象を受けました。
勝ち上がりトーナメントの難しさ
ケイリンは1回戦が鬼門です。
勝ち上がり式は
1回戦→2着上がり(2着以下は10分後から敗者復活戦)
準々決勝→4着上がり
準決勝→3着上がり
決勝or順位決定戦
ややこしいですが、とにかく1回戦を2着以内で勝ち上がらなければ10分後から始まる敗者復活戦でもう一回走って2着以内で帰ってこないと準々決勝に進めません。
負けたら即終了です。
勝ち上がりトーナメントって本当厳しい……。
命削ってるだろこれ
今までの経験から敗者復活戦に回ってもよいという覚悟をもって強気に長い距離でもいかなければなりませんが、そうは言っても本当に負けてしまって敗者復活戦に回るのは体力的にも精神的にもジリジリと削られる怖さもありました。
今回は1回戦で落ち着いてレースを運べたおかげで敗者戦に回らず、だいぶ体力も精神的にもいい方向に向いた気がします。
しかしせっかく勝ち上がった準々決勝でも負ければ即終了なので、本当にヒリッヒリの戦い。
そして準決勝で勝ち上がって決勝に乗るか、順位決定戦に回ってしまうかも大きな分かれ道。
準々決勝は4着で次に上がれはするものの、全然安心はできないのです。
私は今回
1回戦→2着
準々決勝→4着
準決勝→3着
決勝→5着
ギリッギリで勝ち上がってるな(笑)
サトミナと「命削ってるだろこれ」って言い合いながら、心底苦しい勝ち上がり方と強豪しかいない相手との競り合いのギリギリの世界で……(笑)
勝負の世界の最高峰
足も確かにキツいですが、一瞬のミスもできないのと、勝つための判断をどうするかに集中しすぎて頭と脚がどうにかなりそうでした(笑)。
世界選手権なんだから命削るのは当たり前かもしれないですけど、勝負の世界の最高峰はこれなんだと、レースから数日たった今もヒシヒシと感じています。
今回やっとファイナルの舞台に立つ事ができたケイリン。
日本の競輪とは違い、ファイナルに乗るまでに1日で4本〜5本。そしてスプリントもそうですが何度も言いますが負けたら即終了です。
ファイナルに乗って、ようやく勝負の舞台に立つ事ができます。ファイナル乗る前に負けて敗退したら正直何位でも同じなんですよね……。
勝ち上がる厳しさ、ファイナルに立つ厳しさをこの4年間で嫌と言うほど味わってきました。
そしてそのファイナルで1位をとるだけの力を持ち合わせたサトミナ。
ハッキリ言って誰にも真似できない走りをしていたと思いますし、獲るための全てを本当に兼ね備えていたと近くにいて思いました。
頭と脚のチグハグな会話
私もファイナルの舞台に立ってようやくスタートだと思えましたし、ここで満足して負けるなんて苦労して勝ち上がった意味がないと思っていました。
ただもうファイナルに乗ったとき、私の体力ゲージは残り10%だよーって脚の方が言い始めました(笑)。
頭では絶対チャンスがあるからと思えていたのに、とてもチグハグの初めての感覚でした。
頭「勝ちたい」
脚「無理だよ」
みたいな(笑)。
頼むから無理って言わないでくれーって(笑)。
サトミナ、あなたの脚はどうなってんの?!
でも、だからこそ、分かる。
勝ち上がるだけでもこんなにきつい状態なのに、最後イギリスのスプリント女王エマ(・フィヌカン)ちゃんを捲りにいけるサトミナ、あなたの脚はどうなってんの?!(笑)
こうして日本勢がメダルをとったことも、窪木(一茂)さんとケンティー(山﨑賢人)とサトミナがアルカンシェル獲ったことも、ここまで準備を沢山して、チャンスが来た時に力を発揮して、「獲るべくして獲った」のだと思います。
5位は正直悔しいです。
でも、「地獄」と「戦(いくさ)」と呼べる戦いの中で、沢山の経験を活かし勝ち上がっていく時間は、かけがえの無いものだったと思います。
「悔しかったな〜」と思いつつ、その舞台で戦い抜いた事を誇りに感じながら、今は少し休もうと思います!
日本からの応援届いてましたよ!!
皆さんありがとうございました!!
とか言ってるそばから、11/8から立川で競輪走りますので来てくれたら走りながら喜びます。
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